不動産売却における成年後見人の申立てから売買契約までの流れについて

認知症の進行や意思判断の低下により、不動産の売却が自分の意思で行えなくなった場合、成年後見人の関与が必要になります。とはいえ、「家庭裁判所の許可が必要と聞いたけど、具体的にどうすればいいのか分からない」「本人の生活を守りながら売却できるのか不安」と感じている人も多いのではないでしょうか。
後見人が関与する売却には、財産の管理責任や制度上の制約も多く、親族や本人の意向を尊重しながら、慎重に判断を進めていく必要があります。居住用か非居住用かといった物件の性質、売買契約の可否、同意を求める範囲など、状況に応じて対応の方法が変わる点も注意が必要です。
特に家庭裁判所の許可を得るためには、売却の目的や必要性、後見制度の趣旨に沿った理由付けが求められることがあり、専門家のサポートや法的手続きへの理解が欠かせません。判断能力が不十分な状態で行う法律行為は無効とされるケースもあるため、事前準備や相談の有無が結果を大きく左右します。
成年後見制度を正しく理解し、本人と家族の双方にとって納得のいく不動産売却を実現するには、何から着手すべきかを知ることが第一歩です。今から読む内容には、後悔しないための判断材料と、見落としやすい注意点が凝縮されています。

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住所 | 〒250-0874神奈川県小田原市鴨宮343−2 A 203 |
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成年後見人と不動産の手続きに関わる基本的な内容
後見制度の仕組みと関わりについて
判断能力が低下してしまうと、日常生活の中で重要な契約や財産管理に支障をきたすことがあります。特に不動産の売却や賃貸借契約、登記の変更などの法律行為は、自身で正しく判断することが難しくなるため、第三者の支援が不可欠になります。こうした場面で活用されるのが後見制度です。この制度は、本人の判断能力が不十分な場合に、家庭裁判所の審判によって成年後見人を選任し、本人に代わって法律行為を行うことができる仕組みです。
成年後見人が関与することにより、不動産の手続きにおいても法律的な整合性が保たれ、トラブルの回避に繋がります。本人が所有する不動産を売却して介護施設の入所費用に充てる場合、後見人が本人の利益を守るために売買契約を締結し、裁判所の許可を得た上で手続きを進めることになります。ここで重要なのは、成年後見制度が本人の財産を守るためのものであり、決して成年後見人の判断だけで自由に不動産を処分できるわけではないという点です。
この制度は3つの類型に分かれており、それぞれ後見、保佐、補助と呼ばれています。なかでも、典型的な「後見」は、判断能力がほとんどないとされる方を対象にしたもので、不動産の売却や管理を含む全般的な支援が行われます。保佐や補助では、判断能力がある程度残っている場合に必要な手続きについてのみ支援が行われます。
不動産に関わる後見制度の関与には、家庭裁判所の関与が不可欠です。特に売却や贈与といった所有権の移転が伴う行為は、後見人の独断で行うことはできず、裁判所の「許可」を得ることが法律上の前提となります。これは、本人にとって不利益が生じないよう、慎重に判断されるべきであるという観点から設けられている手続きです。
成年後見制度を利用することにより、本人が判断力を失った後でも、法的に認められた形で安全に不動産取引を進めることが可能になります。これは、家族が本人の資産を有効に活用し、生活支援に役立てるための大切な手段です。
制度の種類と不動産への対応の関係
制度の種類 | 対象となる判断能力 | 不動産取引の可否 | 裁判所の関与 |
後見 | ほとんどない | 後見人が代行可能 | 許可が必要 |
保佐 | 著しく不十分 | 同意・代理必要 | 必要に応じて |
補助 | 一部不十分 | 同意・代理可能 | 限定的に関与 |
後見制度の正確な理解と活用は、不動産売却や相続などの手続きを安全かつ円滑に進めるうえで不可欠です。
成年後見人に求められる立場と責任
成年後見人は、本人に代わって不動産をはじめとする資産の管理を担う存在であり、その責任は非常に重大です。本人の利益を最大限に保護することが最優先とされ、後見人の行動は常に公的な視点から評価されます。そのため、感情的な判断や私的な事情を持ち込むことは厳しく制限されています。
不動産売却に関しても、後見人が勝手に判断することはできず、家庭裁判所の許可を得る必要があります。この許可申請には、売却の必要性や適正価格での取引であるかといった根拠が求められます。売却後の資金の使途についても説明が必要となるため、後見人は常に透明性を確保した行動が求められます。
後見人の責任は多岐にわたります。不動産の価値を正確に把握するためには、不動産会社や鑑定士への依頼が必要になることもあります。その結果に基づいて売却条件を整え、必要に応じて複数の買主候補と交渉しなければなりません。これらすべての判断と手続きが、本人の生活と財産を守るために行われるべきです。
成年後見人に課される責任の内容
項目 | 内容 |
財産の保全 | 登記の確認、適切な保険加入、修繕などで資産価値を維持 |
売却判断の根拠 | 本人の生活資金確保や施設入所費用捻出など、合理的な理由が必要 |
裁判所への報告義務 | 年間収支や売却計画などを定期的に報告 |
契約交渉の実務 | 適正価格の把握、売買契約の締結、支払い方法や引渡し時期の調整など |
成年後見人には法律面・実務面の両方で高度な判断力が求められ、責任を持って誠実に行動することが義務づけられています。軽い気持ちで担える役割ではなく、本人の人生そのものに影響を与える存在であるという意識を持たなければなりません。
不動産の売却などを予定している場合、後見人が適切な助言者や専門家と連携することで、より良い結果が得られる可能性が高まります。司法書士や弁護士、不動産会社と連携を取りつつ、常に公的視点と本人利益を優先して判断する姿勢が求められます。こうした点を意識することで、成年後見制度が本来目指す「本人の安心と保護」が現実のものとなっていきます。
住んでいる家を売る場合と貸している家を売る場合の違い
暮らしていた家を手放すときに必要になる手続き
住んでいる家を売る場合、その不動産が単なる資産ではなく生活の拠点であるため、手続きには慎重な判断が求められます。特に成年後見制度のもとで手続きを進める際は、本人の生活の安定が最優先されるため、家庭裁判所の許可が必須です。この許可を得るには、売却の目的が明確であり、かつ本人の生活にとって必要性があることを示す必要があります。
施設への転居費用をまかなう、または維持管理が難しくなったため売却するという理由であれば、許可が下りる可能性が高くなります。しかし、本人の意思確認が難しいケースでは、家庭裁判所は代替手段の有無を厳しく判断します。そのため、後見人としては、売却の必要性や本人にとっての利益を詳細に記載した申立書類を整えることが求められます。
売却後の住まいの確保や資金の使途など、生活全体にわたる計画も提出することが望まれます。家庭裁判所は形式的な審査ではなく、生活の安定を見据えた実質的な判断を行うため、売却によって得られる利益だけでなく、その後の生活環境にも配慮した手続きを進める必要があります。
暮らしていた住宅を売却する際に求められる確認事項や準備すべき内容
項目 | 内容 |
売却理由の明確化 | 資金確保、維持困難、施設入居費用など生活上の必要性を説明 |
本人の居住状況の把握 | 売却後の住まいの確保や転居先の安全性 |
家庭裁判所への申立内容の詳細化 | 売却金額の妥当性、生活費の配分、本人に与える影響を明記 |
関係者との連携 | 家族や親族との意見交換や合意形成 |
不動産の査定・契約準備 | 専門業者による評価書の取得と、売買契約書案の作成 |
暮らしていた住宅を売却する場合には、家庭裁判所の視点に立った準備と手続きが求められます。本人の利益と生活の安定を最優先にした判断がなされるよう、丁寧な資料作成と根拠のある行動が重要です。安易な判断はトラブルの原因となるため、司法書士や弁護士などの専門家のサポートを得ながら進めることが推奨されます。
貸している物件を処分する際に注意すること
貸している家を売却する場合には、賃借人が存在することによる特有の注意点が生じます。物件が賃貸中であることは、売却において一種の制約要因となるため、取引条件の整理が重要です。成年後見制度においても、賃貸中物件の売却には家庭裁判所の許可が必要であり、契約関係と財産管理の両面に配慮することが求められます。
もっとも重要なのは、現行の賃貸借契約の内容を正確に把握し、買主がその契約を引き継ぐか否かを明確にすることです。原則として、賃貸借契約は不動産と一体の権利として承継されるため、売却後も賃借人がそのまま居住を続ける形になります。この場合、買主はオーナーチェンジという形式で物件を取得します。
しかし、買主が自己使用を前提に購入を希望する場合は、賃貸契約の解約手続きが必要となり、正当な理由がなければ立ち退き交渉は難航する可能性があります。そのため、売却前に賃借人との合意を得るか、更新拒絶のタイミングを見計らうなど、事前準備が欠かせません。
成年後見人としての立場では、賃借人とのトラブルを回避するため、書面でのやりとりや契約内容の確認を丁寧に行う必要があります。家庭裁判所への申立時にも、賃貸借契約の詳細と売却による影響を明記し、財産管理上の正当性を主張することが重要です。
貸している家を売却する際に確認すべき要点
項目 | 内容 |
賃貸契約の有無と内容確認 | 契約期間、更新日、解約条項、賃料などを正確に把握 |
賃借人への通知と同意 | 売却意向やオーナーチェンジの説明、必要に応じた合意形成 |
買主との条件整理 | 賃貸継続前提か自己使用かによって契約条件を調整 |
家庭裁判所への説明書類作成 | 売却理由、契約影響、収益見込、本人利益を明記 |
専門家の関与 | 不動産業者、弁護士、司法書士と連携し、法的・実務面の対応を万全にする |
貸している物件を売却する場合は、賃貸借関係を正確に理解したうえで、買主・賃借人・家庭裁判所それぞれに対する説明責任を果たすことが重要です。条件の整理を怠ると、契約不成立やトラブルの原因となるため、早い段階で専門家を交えて検討を進めると、より円滑な売却が実現できます。
売却の手続きを進めるときに必要な準備
家庭裁判所への申立てに必要なもの
成年後見人が不動産を売却する際には、まず家庭裁判所への申立てが必要です。この手続きは、財産管理を担う成年後見人が適切に資産を処分することを認めてもらうために行われる重要なステップです。申立てには、いくつかの書類と準備が求められます。売却の必要性や売却先、売却価格の妥当性を明確に示すことが求められますので、事前準備が鍵を握ります。
申立てに必要な主な書類としては、不動産の登記事項証明書や固定資産評価証明書、売買契約書の案、後見人の登記事項証明書などがあります。これに本人(被後見人)の生活状況や健康状態に関する情報も必要になる場合があります。これらの情報を通して、売却が本人の利益にかなっているかどうかを裁判所が判断します。
申立てにあたって必要となる主な項目
書類の種類 | 内容の説明 |
登記事項証明書 | 対象となる不動産の所有者情報や権利関係が記載された登記内容を証明する書類 |
固定資産評価証明書 | 自治体が発行する評価額の証明で、売却価格の妥当性を説明する際に参考になる |
売買契約書の案 | 買主との間で取り交わす予定の契約内容を事前に提出し、条件の正当性を説明する |
後見登記事項証明書 | 後見人の資格や範囲を示す証明で、本人の代理人としての権限があることを示すために必要 |
本人の生活状況の説明文 | 不動産売却が本人の生活にどのように関わるかを裁判所に理解してもらうための資料 |
申立書の準備においては、必要な情報を正確に整えるだけでなく、全体のストーリー性も意識することが重要です。裁判所が「なぜ今売却するのか」「それが本人にとってどう有益か」を明確に把握できるように構成することで、スムーズに審理が進む可能性が高まります。
提出書類の様式は家庭裁判所によって若干異なることがあるため、事前に対象の裁判所に確認を取ることも大切です。申立てを行う時期や審理のスケジュールについても、余裕を持って計画を立てることが望ましいです。書類の準備や説明内容に不安がある場合は、司法書士などの専門家に相談することも選択肢の一つとして考えられます。
話し合いと確認が必要になる周囲との関係
不動産の売却を成年後見人が行う場合、その判断や手続きは本人の利益を最優先に進める必要がありますが、実際には親族や関係者との信頼関係や理解も欠かせません。被後見人の生活に関心を寄せる親族が多い場合や、過去に相続や財産に関する意見の相違があった場合には、事前にしっかりと話し合いの場を設けることが求められます。
家庭裁判所は、申立てが適切かどうかを判断する際に、売却の必要性だけでなく、親族間で意見の対立がないか、同意が得られているかといった点も重視します。したがって、売却に関係する情報や背景について、あらかじめ親族や利害関係人と共有し、必要に応じて理解や協力を得ておくことが重要です。
売却に関して事前に確認・相談しておくべき関係者とその対応ポイント
関係者の区分 | 主な確認内容 |
親族(兄弟姉妹など) | 売却の理由や金額、今後の資産の管理についての理解と同意 |
推定相続人 | 売却後の財産分配の可能性や、相続時の取り扱いに関する意見の確認 |
近隣住民・管理組合 | 売却に伴って発生する手続き(引き渡し時期や共有部分の使用について)への配慮 |
利害関係人(賃借人など) | 不動産に関わる第三者がいる場合は、賃貸契約や退去時期の調整といった具体的な合意形成が必要 |
売却によって被後見人の生活にどのような変化が生じるか、またその変化が周囲にどのように影響するかも含めて説明することで、関係者との間に無用な誤解や不信感を生じさせることを防げます。感情的な対立が発生しやすい親族間では、丁寧な言葉と文書での説明が効果的です。
必要であれば、後見制度に詳しい弁護士や司法書士、社会福祉士といった専門職の同席を求め、客観的な立場から状況を整理してもらうと、円滑に合意を形成しやすくなります。話し合いの内容は文書にまとめておき、後日トラブルが生じた際にも説明できるよう記録を残しておくことが勧められます。
売却という重大な判断を進めるには、制度上の手続きだけでなく、周囲の理解と協力があってこそ実現可能です。そのため、関係者との関係性を尊重しながら誠実に対応する姿勢が問われます。
手続きにかかる期間とその進み方の目安
申立てから売買契約に至るまでの流れ
成年後見制度を利用して不動産の売却を進める場合、まず家庭裁判所への申立てから始まり、その後にさまざまな確認と手続きを経て、ようやく売買契約へと進みます。この一連の流れには時間がかかる場面も多くありますが、それぞれの工程にはしっかりとした理由があります。
まず初めに、家庭裁判所への申立てが必要です。この申立ては、成年後見人が被後見人の財産を処分する意向を明確にするための重要なステップです。申立書類には、売却予定の不動産に関する詳細、売却の理由、売却後の資金の使途などが求められるため、準備には慎重さが求められます。裁判所が必要とする情報を過不足なくそろえることで、審理までの時間を短縮できる場合があります。
裁判所は提出された情報を基に判断を行い、必要に応じて追加資料の提出を求めることがあります。この段階では、売却が本人にとって不利益ではないかを慎重に審査されます。家庭裁判所が納得するまで審理が続くこともあるため、ここでの応対は丁寧さと冷静さが求められます。
審理を経て売却の許可が下りた後は、ようやく不動産会社との契約締結、買主との交渉、契約書類の作成といった実務的な手続きへと進みます。後見人が関与する場合は、一般の売買と比べて説明責任が重く、買主側にも慎重な姿勢が求められるため、合意形成にはやや時間がかかることもあります。
手続きの段階 | 内容の要点 |
家庭裁判所への申立て | 売却の理由、資金用途、不動産情報などを明記した申立書類を提出する |
裁判所による審理・確認 | 本人の生活に不利益がないか、必要性や売却価格の妥当性を審査される |
売却許可の取得 | 許可が下りた後、売買手続きを進められるようになる |
不動産業者・買主との契約 | 売却条件を確認し、契約書類を整えて合意に至る |
売買契約に至るまでには複数の段階があり、それぞれに意味と必要性があります。ひとつひとつを丁寧に確認しながら進めることが、後のトラブルを避けるうえで重要です。特に家庭裁判所の判断は柔軟性よりも安全性が優先されるため、焦らずに対応を進める心構えが求められます。
期間が長引くケースとその対応
成年後見人による不動産売却手続きでは、予定よりも期間が長くなることがあります。その要因はさまざまですが、主に書類の不備、家庭裁判所での判断の遅れ、関係者との意思疎通の不足などが関係しています。これらは単独で起こることもありますが、複数の要素が重なって全体の進行を停滞させる場合もあるため、事前に理解しておくことが大切です。
提出書類に不備がある場合には、家庭裁判所から修正や追加提出の指示が入ることになります。売却対象の不動産に関する資料が不足していたり、売却の理由や資金の使用目的についての説明が不十分であったりすると、審査が進まず時間を要します。こうした事態を防ぐためには、申立前の準備段階で専門家に相談することが有効です。
家庭裁判所での判断が遅れることも想定されます。後見制度は被後見人の保護を最優先とする制度であるため、売却における不利益の有無について慎重に検討されます。その結果、他の案件との兼ね合いもあって審査に時間を要することがあります。この場合、担当窓口への確認を行い、審理状況の把握に努める姿勢が求められます。
関係者、特に親族との間で意見がまとまらないことも原因になります。売却に反対する声がある場合や、使途に疑問が呈される場面では、家庭裁判所も意見を聞きながら判断を下すため、さらに時間がかかることが避けられません。これに対処するには、事前に合意形成のプロセスを設けることが望ましく、対話の場を丁寧に設けることが必要です。
遅延原因と対応方法
遅延の原因 | 対応のポイント |
書類の不備 | 提出前に専門家のチェックを受けて精度を高める |
審査の長期化 | 裁判所との連絡を密にし、必要に応じて状況の確認を行う |
親族との意見の不一致 | 合意形成の場を早期に設け、丁寧な説明と理解を得るよう努める |
売却に至るまでのプロセスは一様ではなく、各家庭や状況によって異なる事情が重なります。だからこそ、時間がかかる可能性を最初から見込んでスケジュールを立てることが重要です。余裕を持った対応と準備を意識することで、想定外の遅れに慌てることなく落ち着いて対応することができます。何よりも、関係者との連携と対話を怠らない姿勢が、結果的に手続き全体の円滑化につながります。
売却にかかる費用と支払いのタイミング
裁判所に支払う費用の考え方
家庭裁判所を介して不動産を売却する場面では、通常の売却手続きに法的な審査や申立てが求められます。特に成年後見制度や相続に関わるケースでは、申立てを行うことにより、裁判所の判断を仰ぐ必要があり、その際には一定の費用が発生します。これらは、不動産仲介手数料や登記費用とは異なり、裁判手続きに特有の費用項目です。
家庭裁判所に支払う費用は、基本的には申立書の提出時に必要となるもので、書類を受け付けるための収入印紙代や、郵送用の切手代などが該当します。裁判所が鑑定や調査を行う必要があると判断した場合には、そのための費用を別途納付しなければならないこともあります。成年後見人等が選任される場合、その報酬も一定の基準で支払われることになります。
これらの費用は、売却の初期段階に発生することが多く、支払いのタイミングについてもあらかじめ把握しておくことが大切です。支出を想定していなかった場合、手続きが途中で滞る原因になる可能性もあります。家庭裁判所を通じた手続きは時間がかかることがあり、その進行に合わせて支払いが求められるケースも見受けられます。
家庭裁判所に関連して発生しやすい支出と概要
項目 | 内容の概要 | 支払いのタイミング |
収入印紙代 | 申立書提出時に必要になる費用 | 書類提出時 |
切手代 | 裁判所からの通知や書類送付に使用 | 書類提出時 |
鑑定費用 | 不動産の評価や本人の状態調査に用いる | 裁判所の指示後 |
後見人報酬 | 家庭裁判所が選任した後見人への報酬 | 家庭裁判所の決定により随時 |
申立てにかかる費用は、売却全体の流れの中で早い段階で発生します。準備が整っていないと、申立てが受理されない、あるいは手続きが先送りされる可能性もあるため、事前に確認をしておくと安心です。鑑定費用や後見人報酬は裁判所の判断次第で発生の有無が変わるため、柔軟な対応が求められます。
売却後にかかる登記などの手続き費用
不動産を売却する際には、契約書の締結や代金の授受といった目に見える流れだけでなく、その後に行われる登記手続きにも注意が必要です。登記は不動産の所有権を新たな所有者に正式に移すために不可欠な作業であり、手続きを行うには専門的な知識が求められるため、司法書士への依頼が一般的です。
登記関連の手続きには、主に登録免許税や司法書士報酬がかかります。登録免許税は法務局に納める公的な税金で、これは不動産の価格や登記内容によって異なります。この費用は原則として買主が負担する場合が多いものの、ケースによっては売主側でも一定の手続きが求められることがあります。
登記に必要な書類の準備や印鑑証明の取得、公的証明書の取り寄せなどにも、地味ながら費用と時間がかかります。相続人全員の同意や、登記名義人と実際の所有者が異なるような場合には、書類の整備に労力がかかり、結果として専門家への依頼範囲が広がる傾向があります。
登記や関連手続きに伴って発生する費用と内容
項目 | 内容の説明 | 負担する場面 |
登録免許税 | 所有権移転登記などにかかる国に納める税金 | 売主や買主の合意内容による |
司法書士報酬 | 登記手続きを委任した専門家への支払い | 手続き完了時に支払うことが多い |
印鑑証明書発行費 | 登記に必要な正式な署名確認用書類 | 市区町村窓口で取得時 |
登記事項証明書取得費 | 不動産の現状を証明する資料として用意する | 事前確認や証明時に必要 |
特に注意したいのは、こうした費用が売却前には発生せず、契約がまとまってから支払うケースが多い点です。そのため、売買契約を進める中で、これらの準備をあらかじめ視野に入れておかないと、引き渡し時に慌ててしまうことも考えられます。司法書士への依頼も、タイミングを逸すると売却スケジュールに影響する可能性があるため、早めに相談を始めておくことが賢明です。
登記費用については地域や依頼する事務所によって多少の違いが生じるため、複数の専門家に相談して見積もりを比較する姿勢も大切です。書類の不備や手続きの遅れは、売却後のトラブルにもつながりかねないため、手続きの段階に応じて必要な準備を丁寧に整えることが、スムーズな登記完了への近道となります。
まとめ
成年後見人が関与する不動産の売却は、単に物件を処分するという行為ではなく、本人の生活を守り、権利を尊重するための重要な手続きです。判断能力が不十分な状態での売買契約は、後に無効とされる可能性もあるため、家庭裁判所の許可や制度の正確な理解が欠かせません。
成年後見制度を利用した売却では、後見人の選任、売却許可の申立て、必要書類の整備など、複数の段階を経る必要があります。特に居住用か非居住用か、本人の意思能力の状況、親族の同意の有無などによって、進め方や必要な対応が変わるため、一般的な不動産取引よりも慎重な判断が求められます。
成年後見制度はあくまで本人の利益を守ることが主目的とされているため、単に財産の処分だけでなく、介護や生活の継続性にも目を向けた対応が必要です。そのため、後見人だけでなく、司法書士や弁護士といった専門家との連携が、制度の正しい活用につながります。
悩みを抱える家族にとって、不動産の売却は重要な選択肢の一つです。損失を避けるためにも、まずは制度の全体像を理解し、必要な判断材料を一つずつ確認しながら進めることが、本人と家族双方にとって納得できる解決への近道となります。

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住所 | 〒250-0874神奈川県小田原市鴨宮343−2 A 203 |
電話 | 0465-43-9873 |
よくある質問
Q. 成年後見人が本人の住んでいる家を売却するには、どのような許可が必要ですか
A. 本人が暮らしている居住用の不動産を売却する場合は、家庭裁判所の許可が必須となります。この許可は単なる形式的なものではなく、本人の生活や介護状況、他に移る施設の準備状況などが総合的に考慮されるため、許可が下りるまでに時間がかかることがあります。家庭裁判所は財産の処分が本人の利益にかなっているかを厳しく審査するため、提出書類には意思能力の診断や生活設計に関する記載も求められる場合があります。そのため、後見人としては生活の継続性と財産保全の両面から準備することが求められます。
Q. 成年後見人がいる状態で、不動産会社に売却を依頼するにはどのような注意点がありますか
A. 成年後見人として不動産会社に売却を依頼する際は、媒介契約の形式に注意が必要です。専任媒介契約や一般媒介契約といった形態により、会社とのやり取りの頻度や売却活動の自由度が異なります。地域の状況や物件の状態に詳しい不動産業者を選ぶことで、売買契約までの流れがスムーズになりやすくなります。成年後見制度を通じた売却では、売却価格や契約内容に対して家庭裁判所の確認も必要となるため、契約締結のタイミングや買主との合意事項について、裁判所の判断が下りるまで仮契約の扱いにとどめるといった配慮も欠かせません。
Q. 成年後見人による売却の申立てから登記完了までにかかる期間はどの程度ですか
A. 申立てから売買契約の成立、登記完了までには、複数の段階を経るため一定の期間がかかります。裁判所による審査には時間を要し、必要書類に不備があると再提出が求められる場合もあります。親族間の意見のすり合わせや本人の生活環境の変化が考慮される場面もあるため、全体のスケジュールに影響が出ることがあります。売却許可が下りた後も、登記にかかる登録免許税や申請手続きの準備を迅速に行うことが求められるため、あらかじめ全体の流れと各段階での対応を明確にしておくことが、遅延を防ぐ有効な対策となります。
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